死後事務委任契約
- 行政書士 法務事務所とらねこ

- 11月23日
- 読了時間: 4分
更新日:3 日前

近年、お一人で暮らす方や、配偶者以外の親族は遠方に住んでいるという方が増えています。特に移住者の多い石垣島のような地域では、友人とのつながりはあっても、いざという時に頼れる親族が近くにいない という方も珍しくありません。
人が亡くなった後には、葬儀・火葬・納骨の手配、公共料金の解約、賃貸物件の退去、遺品整理など短期間で多くの手続きが必要になります。親族が近くにいない場合や、高齢で対応できない場合などは、こうした「死後の事務手続き」を第三者に任せたいと考える方も多くいらっしゃいます。そこで今回の記事では、死後事務委任契約についてまとめました。
【目次】
死後事務委任契約とは?
死後事務委任契約だけではできないこと
(1)預貯金の払い戻し・解約には遺言(遺言執行者)が必要
(2)認知機能が低下した際のサポートには任意後見契約が必要
費用の支払い方法は主に3つ
まとめ
※この記事は2025年11月23日現在の情報で執筆しています。
1.死後事務委任契約とは?
死後事務委任契約は、亡くなった後の事務手続きを誰かに任せるための契約です。(公正証書で作成するのが一般的です)
▼任せられる内容の一例
親族・関係者への連絡
入院費・医療費等の精算
葬儀・火葬・納骨の手配
遺品整理・片付け
賃貸物件の退去に関する手続き
公共料金・携帯の解約
行政機関への各種届出 など
お一人暮らしの方や、親族に負担をかけたくない方にとって、死後事務委任契約は大きな安心につながる契約です。ただし、死後事務委任契約だけではできない手続きもありますのでご注意ください。
2.死後事務委任契約だけではできないこと
(1)預貯金の払い戻し・解約
→ 遺言で遺言執行者を指定しておく必要があります。
遺言執行者は、
相続人確定のための戸籍収集
財産調査
預貯金の払い戻し・解約
など、遺言書に書かれた内容を実現するための一切の行為を行う権限があります。そのため、遺言(遺言執行者指定)と死後事務委任契約はセットで準備しておくとよいでしょう。
(2)認知機能が低下した際のサポート(生前の備え)
→任意後見契約を締結することでサポートを受けられます。
死後事務委任契約は 亡くなった後の手続き専用の契約のため、生前のサポート(例:入院手続き、施設入所の手続きなど)はできません。認知機能が低下した際に支援を受けたい場合は、任意後見契約 も締結する必要があります。
なお、亡くなった後に役所へ提出する死亡届は、戸籍法で届出人が限定されており、死後事務委任契約の受任者は届出人に含まれません。一方で、任意後見人や任意後見受任者は届出人に含まれます。
3.費用の支払い方法は主に3つ
死後事務委任費用の支払い方法は契約先によって異なり、次の3つが一般的です。
(1)生前に預託金を渡す(前払い)
契約時に、死後に必要な費用として数十万円〜100万円以上 を預ける方法です。
<メリット>
費用を生前に支払っておけるため、死後のことを気にしなくてもよい
<デメリット>
預託金の金額が大きくなりがち
死後にも追加費用が必要な契約内容になっているケースもある(総額が高額)
受任者が倒産した場合、返還されないリスクがある
※実際に、預託金を預かっていた団体が倒産し返還されなかった事例があります
(2)死後に預貯金から精算する(後払い)
亡くなった後、本人の預貯金から必要な費用を支払う方法です。
<メリット>
生前に大きなお金を預ける必要がない
金銭トラブルが起こりにくい
<デメリット>
死亡時に預貯金が不足していると対応できる範囲に限界がある
(3)信託を利用する
銀行や信託会社に専用口座(信託口座)を作り、死後の費用を安全に管理しておく方法です。
<メリット>
受任者が倒産しても財産が失われない
<デメリット>
初期費用や管理料がかかる(数万円〜)
一定額(100〜200万円)の設定が必要なこともある
4.まとめ
死後事務委任契約は、亡くなった後の事務手続きを任せるための契約 です。
ただし、
預貯金の払い戻し・解約など財産に関する手続きも必要になるため、遺言書を作成し遺言執行者を指定する
認知機能が下がった際のサポートを希望する場合は任意後見契約をする
ことが必要です。これらを組み合わせることで、「生前〜死後までの連続した備え」になる と言えます。
また、費用の支払い方法は主に3つあります。
生前に預託金を渡す(前払い)
死後に預貯金から精算する(後払い)
信託を利用する
とくに預託金方式(前払い)は内容をよく確認し、ご自身に合った契約を結ぶことが大切です。
行政書士法務事務所とらねこ
行政書士 青山わか







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