尊厳死宣言公正証書
- 行政書士 法務事務所とらねこ

- 11月30日
- 読了時間: 3分

重い病気や事故によって、自分の意思を十分に伝えられなくなる可能性は、誰にでも起こり得ます。本人の考えを確認できない状況では、家族が判断に迷ったり、医療従事者が対応に苦慮することも少なくありません。近年では、延命だけを目的とした医療行為を避けたいと希望される方も多くなっており、その意思をどのように示しておくかが、一つの課題となっています。
こうした背景を踏まえ、今回は尊厳死宣言公正証書についてまとめました。
【目次】
尊厳死宣言公正証書とは?
公正証書として作成する理由
遺言書とは別に準備が必要
まとめ
※この記事は2025年11月30日現在の情報で執筆しています。
1.尊厳死宣言公正証書とは?
尊厳死とは、「回復が見込めず死期が迫っている状態で、延命のためだけの医療行為を避け、本人が望む形で最期を迎えること」を指します。尊厳死宣言公正証書は、こうした考え方を前提に、本人の判断能力が十分なうちに、将来回復が期待できないほど重篤な状態になった場合の医療の希望を、公証人に伝えて公正証書として作成してもらう文書です。
たとえば、次のような内容を含むことができます。
回復の見込みが乏しい場合には延命措置を控えてほしい
苦痛を和らげる医療(緩和ケア)を優先してほしい
最期をどこで迎えたいか
臓器提供を望むか など
法的な拘束力があるわけではありませんが、こうした内容を公正証書として残しておくことで、本人が意思表示できない時でも、家族や医療従事者が判断する際の重要な指針となります。
2.公正証書として作成する理由
尊厳死に関する考えを手書きのメモなどで残すことも可能ですが、公正証書として作成することで、次のような利点があります。
本人の意思を明確に示すことができる
公証人が本人の意思能力を確認したうえで内容を聞き取り、文書としてまとめるため、「確かに本人が望んだ内容である」という点が明確になります。
公的な文書として証明力が高い
公正証書は、作成日や内容が第三者によって確認されるため、私的なメモと比べて信頼性が高く、必要な場面で家族や医療従事者が判断する際の重要な資料になります。
3.遺言書とは別に準備が必要
「遺言書に尊厳死の意向を書いておけばよいのでは?」という質問を受けることがあります。しかし、遺言書に記載できる内容は法律で定められており(法定遺言事項)、医療に関する希望は対象外です。
▼遺言書に記載できる主な事項
遺産の分け方
相続人の廃除又は取り消し
子の認知
後見人の指定
遺言執行者の指定 など
いずれも亡くなった後に効力が生じる事項であり、生前の医療判断とは直接関係しません。そのため、尊厳死の意向に関する文書と遺言書は別に準備をしておく必要があります。
4.まとめ
尊厳死とは「過度な延命を避け、本人が望む形で最期を迎えること」
尊厳死宣言公正証書は、将来希望する治療等を明確にするための公的文書
公正証書にすることで、内容の信頼性や明確性が確保される
尊厳死の希望は遺言書に記載するのではなく、別に準備が必要
年末年始など、ご家族が集まる機会は、相続や将来の医療のあり方について話し合う良いタイミングでもあります。尊厳死についての考え方や、その意思の示し方を共有しておくことで、いざという時に本人の意思を尊重した対応がしやすくなります。
前回の記事で取り上げた、死後事務委任契約(遺言、任意後見契約)についても、あわせて参考にしていただければと思います。
行政書士法務事務所とらねこ
行政書士 青山わか







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